はじめに
日本は資格社会と言われて久しいですが、IT業界にも数多くの資格があります。エンジニアという仕事をしている方であれば、自身の知識や技能を示す手段として、資格取得というのは一度は通る道ではないでしょうか。しかし、近年はSNSが発達し、誰もが自分の存在や考えを手軽に発信できるようになりました。もちろん、自分のスキルをアピールすることもできます。このように自己表現の方法が多様化する昨今、「エンジニアにとって資格とは何なのか?」について考えてみたいと思います。
この記事で扱う資格の範囲
今回この記事で、対象とする「資格」というのは、IT業界で流通する国家資格、公的資格、民間資格とします。以下の資格については対象外とします。
- 学士号、修士号など教育機関によって与えられる資格
- 医師、弁護士、会計士など資格取得が職業に直結する資格
筆者の資格取得歴
これから「エンジニアにとって資格とは何なのか?」について話を進めていくわけですが、結局のところ、扱う技術分野や経歴によって、資格の重要性が異なるのではないでしょうか。つまり、人によって考え方は様々かと思います。なので、あらかじめ私の経歴について共有した上で、話を進めたいと思います。
- 業務経歴
- ソーシャルゲームユーザーの行動分析(約2年)
- 自然言語処理分野における人工知能の研究開発(約2年半)
- 資格取得歴(社会人になって取得した資格)
- Python3エンジニア認定基礎試験
- G検定
- 統計検定2級
- TensorFlow Developer Certificate
私自身、データサイエンスやAIなどを主に業務で扱ってきたので、それに関連する資格を取ってきました。自主的に取ったものもあれば、そうでないものもあります。これから述べることは、あくまでも一エンジニアの見解であり、正解とは限らないので、参考にする程度で見てもらえれば幸いです。
なぜ資格を取るのか
さて、本題に入りますが、なぜ資格を取るのでしょうか。就職・転職に有利だから、昇給したいから、スキルアップしたいからなどいろいろと理由はあるかと思いますが、少なからず根底には、自身の能力を証明したいという考えが共通してあるかと思います。確かに資格は公的機関や民間機関が合格者に一定の知識または技術があることを証明してくれます。
資格はアピールになるか
では、次の論点として、資格はアピールになるかについて考えてみましょう。資格はどの程度、取得者のスキルを証明してくれるのでしょうか。私の個人的な意見ですが、資格を持っていることはアピールにはなると思います。ただし、そのアピールは他者と明確に差別化するものであるかというと、そうは思いません。あくまでも「私は最低限このレベルのことは理解していますよ」くらいのアピールにしかならないと思います。つまり、標準化された知識や技能を証明するものが資格だと考えています。他者からの評価は、一緒に仕事をする上で話が通じるかどうか、その程度でしょう。
どういう人が資格を取るべきなのか
それでは、どういった人が資格を取ったらよいのでしょうか。
初学者
初学者がある特定の分野を学ぶ際、どこから勉強したらよいか悩むことが多いかと思いますが、資格試験の多くは試験範囲やカリキュラムが予め公開されています。なので、それに沿って学習することで初心者は体系的かつ効率的に学ぶことができます。
スキルの習熟度を明確にしたい人
資格試験を受けることで自身の習熟度を知ることができます。点数が公開されない資格試験もあるようですが、少なくとも合否はわかるので、自身のスキルを客観的に測るために資格試験を利用するのは、いいと思います。
業界・分野のスタンダードを習得したい人
資格は国家もしくは民間企業が合格者に一定の知識や技術があることを証明します。したがって、内容はいい加減なものではなく、その業界や分野におけるスタンダードがきちんと抑えられています。なので、既に一定の知識を持っている人でも、改めて知識の確認をしておきたいというのであれば、資格試験は有効であると思います。また、会社が社員に対して、最低限知っておかなければならない水準を示したり、共通認識をつくるという点で資格を利用するのはいいことだと思います。
おわりに
今回は、エンジニアにとって資格とは何なのかを考えてみました。今後、資格は外向きというより、内向きになっていくのではないでしょうか。つまり、自身の知識や技能をアピールするものではなく、自身を客観的に評価する手段としての意味合いが強くなっていくと思います。そして、資格は一定の能力を測るための「ものさし」です。それ以上の能力をアピールしたいというのであれば、資格取得に時間を使う必要はないでしょう。自己表現の方法が多様化する中で、自分のスキルを証明するのにベストな方法というものを常に考えたいですね。
(K.K)