【2022年度人工知能学会全国大会】参加報告

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はじめに

先日、2022年度人工知能学会が開催されました。2020年、2021年はコロナ禍ということもありオンラインのみの開催でしたが、今年度はオンラインと現地でのハイブリッド開催が実現し、学会の様相もコロナ以前に戻りつつあります。今回は、弊社研究開発部も現地参加することができましたので、会場の様子や興味深かった発表について紹介します。

人工知能学会とは

まず、人工知能学会を知らない方に向けて学会の目的や意義を紹介します。同学会の入会案内には次のように説明されています。

人工知能に関する学際的学問研究の促進をはかり,会員相互間および関連学協会との交流の場を提供することを通じて,わが国のこの分野の学問と産業の進歩発展に貢献するとともに,国際的活動を通して世界のこの分野の進歩に貢献することを目的としています.

https://www.ai-gakkai.or.jp/about/membership/

一口に人工知能と言っても、その研究領域は多岐にわたり、データサイエンス、ソフトウェア工学といったものから脳科学、認知科学、生命学といった様々な分野から研究が行われています。以下の図は、同学会が公開しているAIマップです。

https://www.ai-gakkai.or.jp/main_wp/wp-content/themes/customizr-pro_child_2021/images/contents/aimap/AIMap_JP_20200611_22-23D.png

全国大会概要

AIマップで示した多岐にわたる人工知能研究の発表や情報交換が行われる場が、今回参加してきた全国大会です。全国大会は年に1度開催されます。大会の概要は以下の通りです。

概要
  • 2022年度 人工知能学会全国大会(第36回)
  • 日程:2022/6/14(火)~ 6/17(金)
  • 会場:国立京都国際会館
  • 開催形態:オンラインと現地のハイブリッド開催
  • 参加者数(主催者発表):3,029人(内、現地参加1,709人)

今年度は2019年の新潟開催の参加者数を更新し、初の三千人超えを果たしました。現地での参加者数も1,709人と全体の約60%弱であり、少しずつコロナ前の状況に戻りつつあります。

会場の様子

続いて、現地会場の様子を紹介します。

国立京都国際会館

会場となった京都国際会館です。1997年12月に京都議定書が採択された場所でもあります。

国立京都国際会館までの道のり

会場の周りは緑に囲まれた環境で、時間がゆっくり過ぎていくような場所でした。

メインホール

メインホールの様子です。発表中は撮影禁止なので人がいないときに撮影したのですが、発表時には会場の1階部分がほとんど人で埋まるような状況でした。

ロビー

ロビーの様子です。発表の間にはここで研究者の方々が、情報交換をしていました。このほかにも中規模、小規模の発表会場がありました。小さな会場だと、立ち見も発生するくらい多くの人が参加していました。

インタラクティブセッション

続いて、インタラクティブセッションの様子を紹介します。トークセッションはZoomを使ってオンラインで見ることができますが、インタラクティブセッションの場合、直接発表を聞いたり質問をしたりなどは現地参加でしか見ることができません。

インタラクティブセッションの様子

このような様子で、広い空間にポスターを展示したり企業がブース出展し、展示会形式の発表が行われていました。

ポスター発表の様子

インタラクティブセッションでは、2時間弱ポスターの前に発表者が待機していて、ポスターを見せながら研究内容の説明や聞きに来た人の質問に答えたりしていました。

ポスター発表の様子

この時間はお昼時だったので、会場ではおにぎりやサンドウィッチなどの軽食が配られ、緩い雰囲気の中で皆さん発表していました。

ポスター発表の様子

私自身、ハイブリット開催とはいえ、そんなに人はこないだろうと思っていた部分もあったのですが、写真の通りかなり盛況でした。

興味深かった発表

続いては、トークセッションで聴講した発表の中から興味深かったものを紹介します。発表内容は公開情報ではないので、筆者がメモしたものから紹介します。その点をご了承ください。

AI哲学マップ – 人工知能と哲学の対話から新しい研究地図を作る - 三宅 陽一郎
  • 人工知能から哲学を考える試みについての講演
  • 講演者の三宅陽一郎氏は、ゲームにおけるAI開発に携わっており、ゲームAI開発の中で知能とは何かを考える機会が多く、その時に哲学的知見が役立ったとのこと
  • 具体的には、人工知能を探求することは「知能とは何か」を探求することで哲学と通ずるものがある。哲学によって深く探求しエンジニアリングによって証明することができ、そういった意味で人工知能研究も哲学に貢献することができることを述べていた
  • また、西洋哲学、東洋哲学における認知理論と人工知能モデルとの関係性を示していた
  • 例えば、仏教の唯識論とサブサンプション・アーキテクチャは、認知機能を多層化しているという点で似た構造をもっており、偶然なのかもしれないが興味深い
  • 哲学は人工知能研究に新しい観点を与えてくれ、垂直的な発展をもたらす
    • 技術:水平的な発展
    • 哲学:垂直的な発展 → 人工知能を新しい次元・概念へと発展させる
  • 今後は人工知能と哲学の関係性を示すAI哲学マップの構築を考えている
  • 哲学分野では、個々の概念が独自の発展を遂げており、それらがあらゆる人工知能技術を支えているのでマップにまとめるのは難しいが、まずはひとつひとつやっていきたいとのこと
  • 三宅氏は「人工知能のための哲学塾」というイベントを主催しており、その講演録が学会誌著書にまとめられている
人間関係を促進するAIエージェントの可能性と倫理 濱田 太陽
  • 「集団の幸福にAIは寄与できるのか。社会的関係性にAIを介入させることで人間関係を変化させることができるのではないか?」という主旨の発表が行われた
  • 具体例としては不健康をもたらす人間関係にAIが介入して行動変容をもたらし、ウェルビーイングを改善させるなど
  • AIが人間関係に介入して関係性を改善させる研究が進められており、介護ロボット、ソーシャル補助ロボットなど人間の協調活動を促進する効果があることがわかっているが、AIが集団に介入して幸福を改善させるかどうかの研究はまだ始まったばかり
  • 課題
    • 中毒症状への作用:その人にとっての幸せが中毒状態であればAIがそれを促進するような働きをしてしまう
    • 公平性の問題:どういった介入の仕方がいいのかという点は文化的な違いや社会的文脈に影響され、それに応じて公平性も変わってしまう
    • エージェントが人間を知覚する際に、Aの人を優先すべきかBの人を優先すべきかという点も公平性の観点するからすると課題になる
  • 今後AIが人間関係に介入するようになると、間違いなく人間の心理も変化するので、我々受け手の側もAIをどのように認知すべきかという点が重要になってくる
意識とAI 新川 拓哉
  • 意識理論の検証は難しく、「AIが意識を持つ」と考える理論と「意識を持たない」と考える理論がある
  • そもそも意識は主観的な現象なので定義することができない
    • ex) 汎心論・統合情報理論 VS 生物学的自然主義
  • では結局のところどう考えるべきか → 意識の予防原則
  • 意識の予防原則とは
    • 偽陰性のケースより偽陽性のほうが倫理的にはましだと考えるケース
      • 偽陰性:AIに本当は意識があるのに意識がないと見なして道具として扱うことでAIに害が与えられるケース
      • 偽陽性:AIに意識がないのに、意識があると見なして道徳的配慮をすることで研究開発が遅れるケース
      • → 意識の問題については偽陰性の立場から考えるのが妥当であろう。つまり、AIに意識があるものとして考える
  • この発表では、例として以下の推論を挙げ、AIは意識を持ちうるかという点を検証していた
    • 意識の予防原則を前提に、将棋AIが意識を持つと仮定する
    • 将棋AIは感覚器官や身体を持たないので、人間のように意識を持たないのではないか?
    • しかし、感覚的な経験がなくても思考できる存在者は想像可能である
    • ならば、将棋AIは非感覚的な思考ができる点で人間と似ており、感覚的な経験がなくても思考できる存在者と認めることができるのではないか?
  • この仮説の検証方法として、非感覚的な思考を説明するために人間の思考構造とAIの思考構造を比較しており、哲学的なアプローチからAIの意識を論じていた

人工知能の今後

今回、興味深かった研究には、計算機科学寄りの具体的な研究発表ではなく、抽象的なテーマを扱ったものを挙げさせていただきました。というのもこれに関連した最近の人工知能の話題としてLaMDAがあったからです。簡単に概要を説明しますと、Googleが開発した言語モデルLaMDAと同社のエンジニアが対話を行い、最終的にそのエンジニアがLaMDAに感情と知性があると主張しました。この話題は、今後AIと人間との間で表出するであろう問題を示しています。当然、人工知能学会の中でもこれに関連した議論が出ましたが、この問題を考える上で「意識とは何か」「知性とは何か」などといった抽象的な概念が重要になってきます。今後、人工知能の性能が高度化するにつれて、私たち人間の側にも「どのようにAIを認識し行動すべきか」という観点がますます求められていくのではないでしょうか。そのヒントは哲学にあるのではないかと個人的には考えています。

グーグルのAIが「知性をもっている」という主張を巡る騒動は、さまざまな課題とリスクを浮き彫りにした
高度な言語処理能力によって自然な“会話”を実現したグーグルの人工知能(AI)「LaMDA」について、同社のエンジニアが「知性をもっている」と主張して波紋を呼んでいる。こうした主張を信じる人が出るほど高度なAIを大手テック企業が利用しうる現実は、さまざまな課題とリスクをはらんでいるとは言えないだろうか。

おわりに

今回は人工知能学会全国大会の様子について紹介しました。オンラインと現地のハイブリッド開催となりましたが、盛況のうちに終わり、研究者同士の交流も多くできたかと思います。今後の人工知能に関しては、社会にどのようにAIを受け入れていくのかという点が大きな焦点となるのではないか、そんな印象が強い大会でした。

K. K

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