【人工知能学会 合同研究会2021】 参加報告

先日、人工知能学会 合同研究会2021に参加してきましたので、合同研究会の様子や興味深かった研究について報告します。 本記事の流れとして、合同研究会2021の概要、個人的に興味深かった研究内容の順に紹介していきます。

合同研究会について

合同研究会は、無料で発表または聴講に参加することが可能で、特徴ある多くの研究会の最先端の活動を広く知ること、研究会相互の交流と理解を深める場となっています。

概要

基本情報

・開催期間:2021/11/26(金)~27(土)

・開催形式:オンライン(Zoom)

・参加費用:無料

・参加者数:867

・発表件数:106

・招待講演数:22(※萌芽研究会セッションを含む)

・参加研究会数:16

・スポンサー数:11

昨年に続き、コロナウイルスの影響でZoomでの開催となりました。各発表については、民間、公的研究機関だけに関わらず、学生の発表も多いように感じました。また、一般発表だけでなく、招待講演も多い印象でした。

16の研究会が参加しているので、様々な研究分野に触れることができました。 また、昨年と比較して、3つの研究会が新たに加わっています。

全体プログラム
合同研究会の全体プログラム

2日間に渡り、計16の研究会が発表を行いました。一般発表だけでなく、スポンサーセミナーや合同企画として、各研究会の合同発表、招待講演が行われていました。発表時間は15分~60分など、研究会によって様々でした。各発表間の休憩時間についても研究会によって異なっていたので、色々な研究会の発表を聴講するには余裕がない状態でした。

興味深かった研究

聴講した発表の中で興味深かった発表について紹介します。発表内容はクローズドな情報なので、私がとったメモをベースとしてまとめていることを予めご了承ください。

AI Safety & Securityの国際研究動向 / 櫻井 幸一(九州大学 )
  • この講演では、国内におけるAI Safety、Security関連の学会と研究開発の現状について紹介していた。
  • 国内では、海外のAI Safety学会群に対応するものがないこと、AI Securityの研究が学術主導レベルであること、Safety(機能安全)の研究者とSecurity(サイバーセキュリティ)の研究者の交流がほとんど行われていないことを報告した。
  • 海外では、自動車に対するサイバーセキュリティについて議論する会議が古くから存在し、近年では、AI Safety、Security関連のワークショップが盛り上がりを見せていることも述べた。
  • このような状況で、企業から「自動運転に対するAIの利活用と安全性」、「サイバー攻撃に対する安全性」について知りたいという強い要求があるため、人工知能の安全性とセキュリティに関する研究協議会を立ち上げたとのこと。
  • 世界的にセキュリティ意識が低いことが懸念されているため、このような研究が増加し、注目され始めていることを感じた。
動画サイトにおける視聴者コメントの特徴抽出 / 堺 雄之介,伊東 栄典(九州大学)
  • この研究では、Youtubeにおいてコメントが荒れている炎上動画を検出する分類器の作成を行っていた。
  • 特徴量として、autonlp-japanese-sentiment-59363モデルを使用し、動画コメントの感情スコア(”positive”、”negative”2値の推定確率)を求めて検証を行っていた。
  • 分類精度は約81%で、感情スコアのみならず、動画の再生数、コメント数、高評価数といった特徴量も含めて学習を行うことで、分類精度が上昇することを確認した。
  • 感情スコアだけでも約72%の分類精度であることを述べていたので、2値の感情だけでなく、様々な感情を考慮して結果が変わるのかが気になるところ。
Analytics of Ambient-ブーバキキ効果を用いた音と印象との紐付けによる雰囲気解析への応用 / 浅井 睦
  • この研究では、従来人間が持ち合わせている直感的な判断機能を解明することを目的として、ブーバキキ効果といわれる研究をもとに、2つの実験を行っていた。最後に、実験結果から開発した雰囲気解析ツールの活用例を紹介していた。
ブーバキキ効果実験に使用される図形の例
引用:https://www.tyg.jp/hs_ch/0002.html
  • 1つ目の実験では、聴覚情報と触覚情報(手)に互換性があることが確認できたため、各種感覚情報には強い相関性があることが分かった。
  • 2つ目の実験では、心理音響の観点から音の成分を分析し、人は高い音、低い音がなっている状態において尖った印象、丸い印象を持ちやすいという可能性を述べた。
  • これらの結果をもとに開発した雰囲気解析ツールによって、場の雰囲気を音の観点から可視化することが可能になり、障害を超えたコミュニケーションの質を高めることに期待できるとのこと。
  • 近年では、ビジネス会議用VRシステムが開発されたように、仮想空間上でのコミュニケーションが求められつつある。この点に注目し、心理学、心理音響の観点から研究を行っているため、他の講演ではなかなか聞けないような興味深い研究内容だと感じた。
ブログデータを用いたDSM-5に基づくうつ病の検出 / 保坂 康彦(芝浦工業大学), 金丸 真奈美(芝浦工業大学), 上岡 英史(芝浦工業大学)
  • この研究では、患者の長期的なブログの文章を用いて、うつ病の推定を行っていた。
  • 文章に注目し、うつ病患者を推定する既存研究があるが、実際の診断方法(DSM-5)に基づいていないことを指摘していた。
  • そこで、実際の診断方法に基づき、cl-tohoku/bert-base-japanese-whole-word-maskingモデル(日本語テキストで事前学習したBERTモデル)を使用し、9つのうつ症状を推定した。
うつ症状の推定結果
引用: https://drive.google.com/file/d/170kr_Occ91p4RfqGaKEkS8hI_KtfMzih/view
  • これらの結果を用いることで、約91%の精度でうつ病患者を推定することに成功している。
  • 疑問点として、データセットのラベル付け作業(うつ病患者が書いた文章なのか)において、研究室のメンバーと友人間で行っているため、医療従事者の観点から見て正確に行えているのかが疑問に思えた。

おわりに

今回初めて、合同研究会に参加しました。16の研究会が参加していたので、様々な研究分野に触れることができました。中には、専門的な内容で理解が難しい講演もありましたが、これも合同研究会の良さだと感じました。私が聴講した発表では、数式を用いての技術的な発表はなく、内容が理解しやすいものになっていましたが、個人的に、もう少し深掘りした技術的なトピックが知りたいところでした。また、セキュリティについての研究会が立ち上がったということもあり、セキュリティを考慮した技術の研究・開発が増加していくことが考えられます。

K.Y

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