2021年の人工知能学会全国大会が6月8日から11日までオンラインで開催されました。
クロージングでは3つの数字が2018年~2021年の4年間を比較する形で発表されました。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
論文発表件数 | 647 | 748 | 915 | 529 |
参加者数 | 2611 | 2897 | 2303 | 2320 |
スポンサー申込数 | 68 | 90 | 87 | 51 |
昨年及び今年の数値をそれまでと比較するに当たっては、コロナ禍でのオンライン開催であることを念頭に置かなければなりません。
さらに昨年の数字を見る場合には特に注意が必要です。昨年は、申し込み開始時点ではそれまでどおりに現地開催の予定だったのですが、直前になってオンライン開催に切り替えられました。そのため、事前に申し込みを行っていた論文発表は(それまでの増加傾向の流れで)一昨年より増加、事前登録での参加者、スポンサーは一昨年からほぼ横ばいになっています。なお、表には書かれていませんが、当日登録の参加者が約500名ほど減少しているため、全体の参加者数が減少しています。
そして、今年の「参加者数」を見てみます。事前登録者数は昨年比500名くらい減少している一方、当日登録者数が一昨年なみに戻っています。その結果、参加者全体としてみてみると、昨年とほぼ同じ数字になっています。
昨年の当日参加者は、オンライン開催が社会的にも未経験であったため様子見をする人たちが多かったのでしょうが、この一年でオンラインイベントに慣れてきたということもあるのかもしれません。
コロナ禍の影響をわかりやすく反映しているのは「論文数」かもしれません。昨年の学会の申し込み時点では研究室自体が正常な運営をしていたのが、この一年はコロナ禍の影響で研究室に集まることも困難だったのではないでしょうか。
さて、特に注目したいのが「スポンサー数」です。
今年は昨年の6割程度にまで減少しています。ほかのイベントでの統計的な数字はありませんが、肌感覚としては全体的な傾向であるように感じます。
実際に参加者の立場から考えてみると、聴講したい発表には注目しますが、スポンサーブースに立ち寄ることはさほど考えていません。事前に狙っていたり、よほど有名な企業であれば(内容によっては)オンラインブースを覗いてみることもありますが、限られた時間の中では、さほど有名でない企業のブースにわざわざ立ち寄ることはしません。
実はこの点はこれまでも(オフラインでも)同じだったのですが、オフラインの場合には物理的に人間が移動するので、有名企業の近くや動線になっている位置にブースを確保できれば、何気なく目の片隅に入ってくる場合があり、「注目はしてなかったけれども少し気になるので覗いてみる」ということが起こります。企業としては、その少ないチャンスをどうやって生かすかに頭を悩ませていました。
ところがオンラインでは、ユーザは意図した情報に明示的にアクセスする仕組みになっています。そのため、「注目してなかったけど少し気になるものが目に入った」という状況は、ほぼ発生しなくなっています。 明示的にブースに立ち寄る(アクセスする)ように仕向けなければなりません。スポンサーとなってお金を出して広告(企業の紹介など)を行っているのに、その広告を見てもらうための施策を別途考えなければならなくなっているわけです。
そうなってくると、企業にとってスポンサーになる意義とは何なのでしょうか?
いずれコロナ禍は収束するでしょう。しかし、その場合にもオンライン化の流れは元には戻らないだろうともいわれています。
今後も継続するであろうオンラインイベントにおいては、企業側もスポンサーとしてのあり方を考えるでしょうし、イベントの主催者もスポンサーに何をもたらすかを考えることになるのではないでしょうか。
(M.H)